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思うが侭に ただ 綴る

そのとき思った言葉を綴る場所
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夏の攻防戦


夏休み。
今日は予定も特にはなく、彼、時空寺刹那は部屋でぼんやりとしていた。

暑いのはどうも苦手だ、と刹那は思う。
畳に仰向けに転がり、左手に持ったぱたぱたと団扇で仰ぐ。
さして涼しくなるわけでもないが、ないよりはましだ。

「暑かったら、エアコンでもつけたらいいんじゃない」

そう千空は言ったが、できれば扇風機を含めそういったものには世話になりたくはなかった。
エアコンや扇風機が苦手なわけではない。
ただ単に電気代がもったいないという理由で使うのをしぶっているのである。

あんまり負担、かけたくないしなぁ。

兄が一冊のノートの前で頭を抱えてうなっているのを見た。
見てはいけないものをみてしまった。
そんな気がして、何も見なかったことにしたが、見てしまった以上負担をかけることになんとなく後ろ髪を引かれるものがあり、今に至る。

それにしても暑い。
この間、暑さが苦手だということを生まれて初めて知った。
どちらかといえば寒い方が有り難い。
兄も「寒いほうが(平気だし、着込めばいいから経済的には)まだマシだ」と言っていたし。

「・・・・・・・・・」

暑い。

暑い暑いと考えているから暑いのかもしれない。
奇跡もそう言ってたし。
顔でも洗って気分を入れ替えよう。
むくりと起き上がり、戸を開け廊下に出たところで何かを踏んだ。

やわらかい、固い床ではない感触。

とても嫌な予感がした。

ゆっくり、下を確認すると、やはりというか、案の定というか。
自分が踏んだもの、それは人であり、兄だった。

「兄貴ー!!」

足をすぐさまのけ相手を揺さぶる。

「・・・・・・あ、刹那」
どうやら眠っていたようだ。
まだ意識がはっきりしないのか、その表情はぼんやりとしている。

「こんな所で何やってるんだよ?!」
「んー・・・涼しいんだよ、此処」
「昼寝に最適なんだー」とのんきに言うと、再び寝る体制に入る。
「寝るな!せめて部屋で寝てくれ!!」
弟の願いは却下されたらしく、瞬く間に兄は再び眠りの世界に行ってしまった。
こうなってしまうともう駄目だ。

はぁあああと深いため息をつく。

兄のこの廊下で寝る癖について知ったのは、つい最近のことである。
廊下が広ければまだいい。
しかし時空寺家の廊下はあまり広くはなく、人が寝ていたら絶対に踏んでしまうような幅なのだ。
夜中に水でも飲みに行こうと思い、先ほどと同じ事態に陥った。
ただ前回は初めてのことであり、加えて夜中だったこともあり、絶叫した。
兄もさすがに驚いて目を覚まし、以後寝ないと約束したわけだが・・・。

現在、兄はすやすやと廊下で寝ている。

実は昨夜も廊下で寝ていて、兄をたたき起こし、説教をした。
そこで判明したのだが、どうやらちゃんと本人は布団で寝ているのだが、暑かったりすると、いつの間にか寝心地のいい場所を無意識に求めて廊下に来てしまうらしい。

無意識って・・・危なくないか。

暑いのがすべての原因のようだし、それを防ぐ為にも兄だけでもエアコンか扇風機の使用を進めてみたが、兄は断った。

『だったら、廊下で寝てた方が経済的だし』

だから、それをやめてくれと頼んでいるのだ。

その後、弟から兄に対する説教が発動し、2時間後、ついに兄は折れた。
とりあえず扇風機をつけるということになったのだが・・・。
兄の部屋を覗くと、扇風機はコンセントが抜かれていた。

兄貴・・・。

思うことはいろいろあったし、言いたいこと(主に説教)はあったが、とりあえず、此処に寝かしておくわけにもいかない。
・・・自分がまた踏んでしまうかもしれないし。

「よいしょ、っと」

兄の足を掴みずるずると部屋に引っ張っていく。
そのまま部屋の中で一番涼しそうな場所へと運び足を下ろす。
ひきずられたにも関わらず、兄は熟睡しているようでまったく動かなかった。
扇風機のコンセントをさし、つける。
そよそよと涼しい風が彼の髪を揺らした。

「これでよし」

満足気に頷くと、顔を洗うという目的を果たすべく洗面所へと向かった。




そして部屋に戻る途中。
廊下を見ると先ほど部屋に引きずっていったはずの兄が再び廊下で熟睡していた。
ばっちり部屋の扇風機のコンセントを抜いて。

さすがに本日、二度目はなかった。



その後弟により文字通り叩き起こされた兄は正座で説教を受けることになり、この説教で少なくとも弟がいるときには廊下で寝る癖は解消されることになった。
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