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  <title>思うが侭に　ただ　綴る</title>
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  <description>そのとき思った言葉を綴る場所</description>
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  <copyright>© Ninja Tools Inc.</copyright>
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    <title>少々</title>
    <description>
    <![CDATA[保留]]>
    </description>
    <category>空の海で溺れる天使</category>
    <link>https://anothercolor.blog.shinobi.jp/%E7%A9%BA%E3%81%AE%E6%B5%B7%E3%81%A7%E6%BA%BA%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%A4%A9%E4%BD%BF/%E5%B0%91%E3%80%85</link>
    <pubDate>Sat, 26 May 2012 13:04:56 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>どうにもならない思いの丈を</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
花束に込めて、あなたに似合うリボンで括って<br />
とびきりかわいい花束にしよう<br />
<br />
幸せそうに笑うあなたに送る<br />
とびきり素敵な花束にしよう<br />
<br />
その花が枯れてしまうまで、みる度わたしのことを思い出しますようにと願いを込めて<br />
そのときだけは私じゃない、あなたの隣で笑う、その人のことを忘れてしまうくらいに<br />
<br />
どうにもならなかった思いの丈を込めて<br />
<br />
親愛なる、大好きなあなたへ<br />]]>
    </description>
    <category>言葉</category>
    <link>https://anothercolor.blog.shinobi.jp/%E8%A8%80%E8%91%89/%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%AB%E3%82%82%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E6%80%9D%E3%81%84%E3%81%AE%E4%B8%88%E3%82%92</link>
    <pubDate>Sun, 24 Apr 2011 09:43:21 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>スウィート・トッド</title>
    <description>
    <![CDATA[<font size="2"><br />
「伸びてきたね」<br />
<br />
<br />
彼女の言葉は独り言にも聞こえたが、顔を上げたときぱちりと視線があったので、独り言というより俺に向けて発せられた言葉なのだろうということに気付いた。<br />
「なにが？」と聞き返したのと前髪が目にかかってきたのはほぼ同時だった。すぐさま「ああ」と俺は短く納得して、「そういえば、伸びてきたかも」と言いながら目にかかってきた前髪をつまむ。そのまま何気なく引っ張ってのばしてみると、ちょうど目をすっぽり覆ってしまうくらいの長さがあった。<br />
<br />
「しばらく切ってないからなあ」<br />
<br />
あまり気になってはいなかったが、誰かに指摘されると気になってくる。<br />
とりあえず適当なものでくくってしまおうと立ち上がり勉強の机の引き出しをあけてみるが、ヘアゴムは入っていなかった。そういえば前に瑞希がきたときに借りてくと言ったまま返してもらっていない気がする。一瞬、台所用のゴムでくくってしまおうかというよからぬ考えも浮かんだが前にやってひどい目にあったのでできることならそれにはお世話になりたくない。どうしたものかと思っていると、ふとはさみが目にとまった。<br />
<br />
そうだ、切ってしまえばいいじゃないかとはさみを手にとったところで、<br />
<br />
「後ろも随分伸びてる」<br />
ぴったりと背後から声が聞こえたので驚いた。<br />
<br />
頭だけ振りむくと彼女がいつもと変わらぬ無表情とも言えないことはない表情で、自分の後ろ髪を軽くひっぱっていた。<br />
「脅かさないでよ」と少しだけ怒ったように言うと彼女はさして悪くもなさそうに「ごめん」とだけ言ってじっと俺の後ろ髪を見つめた。<br />
<br />
「彼方」<br />
「なに？」<br />
「散髪しよう」<br />
「えっ」<br />
<br />
おれがそういうや否や彼女は俺の手からはさみを取り、「どうせ前髪を切ろうと思ってたんでしょう？ついでに切ってあげるから」と言いながら玄関へと歩いていってしまった。<br />
多分伸びたといったころから彼女は俺の髪を切ろうと決めていたのだろう。それに都合良くのせられてしまった気もするが、あまり長い髪はすきではないし、何より彼女が切ってくれると言っているのだからありがたくその好意に甘えることにするべく俺は新聞と適当なビニールを物置に取りにいくことにした。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
庭の木陰に持ってきた新聞紙を開いてその上に座る。<br />
適当に物置からとってきたビニールを首に巻いてみたが、巻き方が悪かったのが先ほどから背中に切った髪の毛が入ってきてかゆい。<br />
切り終わったら風呂に入ろうと思いながら何気なく物干竿に干してある洗濯物へをみるとはたはたと気持ちよさそうに揺れていた。この天気ならばきっと髪をきるころには乾いているだろう。そのまま空へと視線を移す。空はときどき小さな白い雲がながれてくる位でほぼ快晴といってもよいであろういい天気だった。<br />
<br />
頭の上の方からちょきちょきとリズミカルな音が聞こえる。<br />
髪を切ってもらうに当たってあまり短くしすぎないで下さいとは言ったのだが、どうなるのかは彼女の気分次第なのでちょっとどきどきする。<br />
<br />
<br />
（まあ、初めて彼女に髪を切ってもらって以来そこまでばっさりと切られたことはないけど）<br />
<br />
<br />
初めて彼女に髪を切ってもらったのは中学二年の夏だった。<br />
皆で夏休みの宿題を何故か俺の家でやろうと瑞希に声をかけられて集まる予定が、声をかけた本人は夏風邪でダウンしてしまい、同じく誘われていたあづまは急用ができたとかで、結局俺と彼女だけが残った。せっかく集まったのだからと家の居間で２人で向かい合って黙々と宿題をしていた時。<br />
<br />
ふと、彼女が計算をしていた手をとめて俺をじっとみた。<br />
<br />
その視線に気づいて俺が手をとめて『なんかわかんない問題でもあった？』と問うと彼女はふるふると首を横に振ったあと『暑そうだなあと思って』と言った。<br />
<br />
その頃の俺の髪は腰くらいまで伸びていて、くくろうにも量が多いし、くくったらくくったで重いし、肩はこるしで流石にそろそろどうにかしないと考えていたときだった。<br />
<br />
『暑いよ。くくるとマシだけどその分重いから』と苦笑いしながら答えると彼女は何かを考えるそぶりをみせた後、『じゃあ散髪しよう』と言った。突然の提案に困惑する俺を無視して彼女は自身の筆箱からはさみを取りだした。『えっ？本気で？今から？』と問うと『うん』と短く答えてうなずいた後『短くするの嫌？』と首をかしげて俺に聞いた。<br />
<br />
反則的にかわいかった。<br />
<br />
元々短くしたいなあと思ってなかった訳ではないし、むしろ短く切ってもらえるならありがたいとも思っていたけど、そのしぐさがかわいかったものだから思わずうなずいてしまったというは正直嘘ではない。<br />
<br />
人に髪を切ってもらうのは数年ぶりだったし、正直彼女の腕前もまったく知らないまま話を進めてしまったが、何故か不思議と安心できたのと思っていた以上に彼女は器用だったので結果としてはとてもよかった。<br />
すっきりと短くなった頭を鏡で見ながら『うわーうわー！頭が軽い！涼しい！』と思ったことをやや興奮気味に告げると『でしょう。前々から彼方は短い方が似合うと思ってた』という言葉と同時にふわっと光に溶けるような優しい笑みが目の前に広がった。<br />
<br />
それは今まで見てきたどんな表情よりも綺麗だった。<br />
<br />
その後すぐに『あたしと付き合ってくれない？』と告白されて『いいよ。で、どこに行くの？』とマジボケをかましたり、キスされたり、なんか流れと勢いで付き合うことになったりしたわけなのだが、うん、今考えると勢いって恐ろしいと思う。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「髪、伸びたね」<br />
<br />
ちょきちょきちょき。<br />
俺がいろんなことを思い出していると彼女がもう一度そう言った。<br />
<br />
「そうかな？自分じゃあんまりわかんないんだけど」<br />
「伸びたよ。昔ほどではないけど」<br />
<br />
ちょきちょきちょき。<br />
俺はまた少し過去のことを思い出して、笑う。<br />
<br />
「あの頃は切りたくても切れなかったからなあ。自分で切っても良かったんだけどなんかあれだけ長いともう切るのも面倒になっちゃってて」<br />
「ふうん」<br />
「だからきっかけをくれたなっちゃんに感謝してる。ありがと」<br />
「どういたしまして」<br />
<br />
ちょきちょきちょきちょきちょき。<br />
彼女の口調はいつもと変わらないものだったけれど照れているのかはさみが少し早くなった。<br />
<br />
「ねえ彼方」<br />
「なに？」<br />
「今更だけど、髪を切りたかったんだったら床屋にいけばよかったんじゃない？」<br />
<br />
ちょきちょきちょき。<br />
<br />
「床屋かー・・・あー・・・」<br />
「？どうかしたの？」<br />
<br />
ちょきちょきちょき。<br />
<br />
「んー、実は俺、刃物を持った人間が背後に立ってるのが苦手なんだ」<br />
<br />
ちょき。<br />
<br />
はさみの音と彼女の手が止まる。<br />
<br />
「・・・よく考えてみたら背後に刃物を持った人間がいるというのは怖いと思う、かな」<br />
「でもなっちゃんは今、たまたま俺がそういったからそう考えただけで、さっき俺の話を聞くまでだったらそこまで床屋とか美容院はこわくないでしょ？」<br />
<br />
彼女は少しだけ考えて「そうね」と答えた後髪を切るのを再開した。<br />
<br />
ちょき、ちょき、ちょき。<br />
音は変わらないけれどそのリズムは少しだけ乱れている気がする。<br />
<br />
「昔いろいろあって、床屋であろうが背後にたたれるのが嫌なんだ。前に一度ちびのときにおっちゃんに連れてってもらったんだけどそんときも辛抱できなくって、床屋のおっさんを蹴っ飛ばして逃げた前科がある」<br />
<br />
ちょき、「えっ」と短く彼女が驚いてまた手の動きが止まる。<br />
<br />
「あれは本当に申し訳ないことをしたと思ってるし、以来床屋には行ってない」<br />
「・・・そんなにだめなの？」<br />
「うん」<br />
「そう・・・」<br />
<br />
それから彼女は再び切るのを再会したが口数はずっと減って、髪を切る音だけが静かに庭に響く。<br />
<br />
ちょき、ちょきちょき。<br />
もうすぐ終わりだろうかという頃になって「ねえ」と彼女が口を開いた。<br />
<br />
「今、あたしは彼方の髪を切ってるけど嫌じゃないの？」<br />
「うん、平気だよ」<br />
<br />
ちょきちょきちょき、ちょきん。<br />
<br />
「どうして？」<br />
<br />
<br />
なっちゃんになら殺されてもいいと思ってるからだよ。<br />
<br />
<br />
彼女には決して聞こえない声でそうつぶやいた後、俺はその言葉を砕いて丸めて「信頼しているからだよ」と無難な言葉を口にする。その答えをどう受け止めたのかわからないが「そう」という彼女の短い返事はそう嫌そうなものではなかった。<br />
「終わったわよ」と言って彼女が俺の首のビニールを外す。「ありがと」と短く礼を言った後でぱたぱたと体についている髪の毛を新聞紙の上で落としながら、やっぱりこれは風呂に直行するべきだなと考えていると「彼方」と名前を呼ばれた。顔をあげると彼女の黒く澄んだ瞳と視線があった。<br />
<br />
「・・・さっぱりしたね」<br />
「うん、ありがと」<br />
<br />
短く礼を言って笑うと彼女は少しだけ何かいいたそうな表情をしたが、やめて、変わりに「どうしたしまして」と言った。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
髪の毛の落ちた新聞紙を片付けて、洗濯物を取りこんでるときふと冷蔵庫に食材が少なかったことを思い出した。何かを作れないことはないがせっかく彼女もいるのだし、何か買いにいこうと思い「夕飯作るけど何か食べたいものある？」と聞くと「食べていっていいの？」という言葉が返ってきた。<br />
「いいよ」と答えながら、しまった予定聞いてなかった、と心の中で少し汗をかいた。彼女は少し考えるそぶりを見せてから「カレーが食べたい」と答えた。「カレーね。了解」と答えながら内心少しほっとする。<br />
<br />
「なんか久しぶりに食べたいなあと思って」<br />
「あー、確かにカレーって周期的に食べたくなるよね。調理楽だし、大概なんとかなるしすきだよ」<br />
<br />
そういうと彼女は少しだけくすりと笑った後「そうね」と答えた。<br />
<br />
「本当は床屋行けるようになるか自分で切れるようになるといいんだけどなー」<br />
「その必要はないでしょ」<br />
「なんで？」<br />
「あたしが彼方の髪を切ってあげるから」<br />
<br />
この先もずっと、と後からつぶやくような声で彼女がつけたした。その言葉には（だから、ずっと一緒にいてもいい？）という意味も含まれているような気がして、普段はいろんなことを勝手に決めて進んでいってしまう彼女が少し不安そうにつぶやいたのがなんだか新鮮で、とても愛しかった。<br />
<br />
「ねえ、なっちゃん」<br />
「なあに？」<br />
「また髪が伸びたら切ってくれる？」<br />
<br />
そう訪ねると彼女はほんの少し驚いた顔をした後、とても嬉しそうに目を細めて「いいよ」と言った。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「なんかちょっとプロポーズされた気分だなあ」<br />
「あたしもそれに答えてもらった気分」<br />
「えっ」<br />
「これからもよろしく」<br />
<br />
そういって笑った彼女の笑顔は、初めて髪を切ってもらった後のときのような綺麗な笑顔で。<br />
かなわないなあ、と思いながらも全然悪い気はしなくて、俺は笑った。</font><br />
<br />
<br />
<br />
2010.10.6　執筆]]>
    </description>
    <category>HARUSION*短編</category>
    <link>https://anothercolor.blog.shinobi.jp/harusion-%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%89</link>
    <pubDate>Sun, 31 Oct 2010 10:44:09 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>POOLOOP（プーループ）</title>
    <description>
    <![CDATA[<font size="2"><br />
水の中がすきだった。<br />
光を浴びてきらきらと光る水面。<br />
音のない空間。<br />
<br />
<br />
泳ぐことはあまり好きではなかった。<br />
元来運動をすることが得意ではないということがあるのだが、それ以上に水の中にばしゃばしゃと音を立てる行為というのが嫌だった。<br />
せっかく日常の騒音から解放されて水の中にいるのに、どうして水の中でもそれに近い物を聞かなければいけないのか理解ができなかった。<br />
ただ、その時手足が生み出す無数の泡を眺めるのはすきだったので、いつもプールの時間は角の方に１人で沈んでそれらを遠巻きに眺めていた。<br />
<br />
<br />
水中できらきらと日の光をあびて、水面へと上り消えていく泡はとても美しかった。<br />
小さいころそれに触れてみたいと思い、バタ足をする友人に近づいていったことがある。<br />
うっかり近づきすぎて顔面を思いっきり蹴られて、鼻血が出た。にがい思い出だ。<br />
友人に蹴られた痛みよりも美しい青い水面がぽたぽたと赤で染まっていくことがつらかった。<br />
幸いあまりひどい出血ではなかったのでその赤はすぐに水に解けて消えていったのでほっとしたが、一瞬でもあの美しい水面を汚してしまった事実が消えることはなく、その日からプールの時間になると少し悲しい気持になった。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
夏の終わり、秋の初め。<br />
夏休みも終わり人が消えた市民プールの角に私は一人沈んでいる。<br />
水は少し冷たかったがすぐに慣れた。<br />
夏のぎらぎらした日差しに照らされた水面はもうないけれど、秋の少しやさしくなった日差しに照らされた水面も私はすきだった。<br />
<br />
目を閉じる。<br />
きらきらした世界が見えなくなって、世界が真っ暗になる。<br />
音がなくなる。ときたま聞こえるぽこという音は私が息をしている証拠。<br />
うっすら目をあけると自分から出た泡がぽこぽこと水面に向かってあがっていくところだった。<br />
ふれるとそれはするりと私の手器用によけて、さらに上へ上へと向かってゆく。<br />
<br />
そして上にでた泡ははじけて消える。<br />
私はそれを水中で眺めている。<br />
<br />
<br />
<br />
プールからあがると監視員の青年と目があった。<br />
<br />
「こんにちは」<br />
<br />
青年はさわやかな笑顔でそう言った。<br />
<br />
「こんにちは」<br />
<br />
彼とはこの夏の間で随分と顔馴染みになっていた。<br />
<br />
<br />
<br />
「ずっと沈んでいて浮かんでこないから何かあったのかと思いましたよ」<br />
<br />
私が初めてその青年に出会ったとき少し困ったような笑顔でそう言われた。<br />
突然そんな風に声をかけられたので少しだけ驚いたが、まあたしかにプール来て泳ぐわけでもなくときおり息継ぎに顔を出す以外はプールの底からほとんど動かないのだからそう思われても仕方がないかと思う。<br />
今までにも数回「大丈夫ですか？」とか「何か落とされましたか？」とか聞かれたことがあった。<br />
場所によっては曜日で監視員が変わったりするのでその度に「大丈夫です」と言ったり、一度答えたにも関わらずまだ気にかけてくれていて浮上する度に声をかけられたり、水中からでもわかるくらいずっと視線を送られたりするのがなんだか落ち着かなくて、どこかいい所はないものかと思っていたところにこの市民プールに出会った。<br />
家からあまり近くないので頻繁にこれるわけではないのだが、人が少なく、監視員もこの青年ともう１人くらいしかいなかったので説明も一度で済んだ。<br />
たまに視線を感じるときもあるが、「面倒な客がきたなあ」というようなものは感じなかった。<br />
もっともこれに対しては思っているけれど青年たちが隠すのがうまいのか、私は気楽にプールに沈んでいることができた。<br />
<br />
<br />
<br />
「泳がないんですか？」<br />
「泳ぐのはあまり得意ではないので」<br />
<br />
持ってきていたタオルでがしがしと頭をふきながら私は答える。<br />
まだ暑いとはいえ、濡れたままでいるには少し肌寒い。<br />
<br />
「泳ぐの好きなんですか？」<br />
<br />
そう問うと青年は少し驚いた顔をした後で「はい」と答えた。<br />
<br />
「泳ぐというか、僕はプールで浮いてるのがすきなんです」<br />
<br />
青年はプールの方に視線を移す。<br />
太陽の光を浴びてきらきらと光る水面。<br />
<br />
「プールに浮きながらぼうっと空を眺めていると空や水や自分の境界が曖昧になって、全部溶けて、なんかどうでもよくなってくるんですよ」<br />
<br />
「どうでもよくなるとは？」<br />
<br />
「しなくちゃいけないこととか、考えなくちゃいけないこと全部溶けて、うーん、どうでもいいというか考えなくてもよくなる感じですかね。空とか水の流れみたいになるようになるかなあって」<br />
<br />
「現実逃避ですか」<br />
<br />
「そういわれるとなんかなんとも言えないんですけど・・・まあ、そうですね。課題とかが積み重なってくると無性にプールに来たくなります」<br />
<br />
青年は困ったように頭をかいて笑った。<br />
<br />
「あなたはどうしてプールに沈んでいるんですか？」<br />
「水の底から水面をみるのが昔からすきで」<br />
「なるほど。綺麗ですよね」<br />
「あとはほとんどあなたと同じです」<br />
<br />
きょとんとした顔をした青年に私は少し笑って「現実逃避です」と答えた。<br />
<br />
<br />
<br />
青年と別れシャワーを浴び、着替えて私は市民プールを後にした。<br />
日が傾いてきているが未だコンクリートは熱を持ちじりじりと足を焼く。<br />
あと何回くらいあそこに通うことができるのかを指折り数えると、ちょうど片手いっぱいくらいだった。<br />
夏が終わり秋がきて肌寒くなってくるとあの市民プールは来年の夏がくるまで封鎖される。<br />
<br />
あの青年は来年もあそこにいるのだろうか。<br />
それとももっとよいアルバイトをみつけてそちらにいってしまうのだろうか。<br />
いてくれるとこちらとしては事情を説明しなくともよいので大変助かるのだけど。<br />
<br />
<br />
<br />
今度プールに行ったときは彼が言ったように浮いてみるのも悪くはないかもしれない。<br />
沈むのは得意だが、此処数年浮く努力をしていないから果たしてちゃんと浮くのだろうか。<br />
<br />
少しどきどきしながら、私は家まで続く夏の道を駆け抜けた。</font><br />
<br />
<br />
<br />
2010.10.5　執筆]]>
    </description>
    <category>創作短編</category>
    <link>https://anothercolor.blog.shinobi.jp/%E5%89%B5%E4%BD%9C%E7%9F%AD%E7%B7%A8/pooloop%EF%BC%88%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%EF%BC%89</link>
    <pubDate>Sun, 31 Oct 2010 10:42:04 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>ネガティブハッピーエンド</title>
    <description>
    <![CDATA[<font size="2"><br />
<br />
<br />
「ねえ、思い立ったが吉日っていうじゃない。だから私、今日死んでみようと思うの」<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
大学での講義を終え、昼食はなんにしようかと冷蔵庫の中身のことを考えて部屋に帰ってきたあたしに言った彼女の第一声はこれだった。<br />
<br />
そう言った彼女の表情は陰鬱としたものとはかけはなれている明るい笑顔であったし、その言葉には「ちょっと買い物にでもいってくるわ」というような軽い響きがあったので、あたしはうっかり「いってらっしゃい」といつもの調子で返してしまいそうになった。<br />
<br />
「ある意味洒落にならんわ・・・」<br />
<br />
ぼそっとつぶやくと、彼女はあたしの方をみて「うん？何かいった？」と不思議そうな顔をした。<br />
<br />
「なんでもない」<br />
<br />
そうと短く返し、ぱたぱたと手を左右に振る。彼女は「そう」と短くいうと買い物袋から人が一人ぶらさがっても大丈夫そうなロープずるりと取り出した。<br />
<br />
首吊りでもするつもりだろうか。<br />
<br />
あたしは心のなかで面倒なことになったと思いながら荷物を降ろし、床に座って彼女を観察することにした。<br />
いつものことではあるのだが、彼女はあたしが居ようが居まいが関係ない様子で、鼻歌交じりにロープで輪を作り、ときどき自分の首にかけて「こんなものなのかしら？それとももうすこし輪が広いほうがいいのかしら？」などつぶやき、結んでは首にかけ首にかけてはほどき、ほどいてはまた結び首にかけるという動作を繰り返していた。<br />
それは一見ブティックで女の子がどんな服が似合うのかしらと考えながら試着している姿に似ていた。<br />
ただ、彼女が持っているのはやわらかそうな生地で出来た可愛らしいワンピースではなく、硬そうで荒く無骨なロープであり、それがかなり奇妙な空気を生み出していた。<br />
<br />
ふと、あたしはその奇妙な光景に違和感を感じないことに気づいた。<br />
<br />
どう考えてもおかしいはずなのに、彼女がやっていると不思議な事に何もおかしいことに見えないのだ。やれやれ面倒なことになったな、とは思っているが別段彼女の行動を止めるわけでもなく、怒るわけでも泣くわけでもなくあたしはただ見ていた。<br />
それは彼女とのけして短くはない付き合いの中での培われてきたものなのだろうと思う。<br />
流石に死んでみようなどということはなかったが、それ以外の奇行と呼ばれそうなことは一通り彼女は行っている気がするし、あたしはそれに付き合わされた気がする。<br />
彼女が行ってきた奇行と呼ぶにふさわしい出来事を少しだけ振り返ってみたが、頭が痛くなってきたので考えることをやめることにした。<br />
<br />
「できた！」<br />
<br />
ようやく納得する形に結び終わったらしく彼女は満面の笑みを浮かべた。しばらくの間それをみてにこにこしてはぎゅっと抱きしめてみたり少しほつれたところを整えたりして、それが終わると椅子を使いロープをかける。<br />
昼間の白い光のがあふれる部屋の中央にぶらさげられたロープはまるで芸術品のようだった。<br />
<br />
そして窓を背にそのロープの輪に彼女が首を通そうとした。<br />
<br />
「ねえ、何でそんなことしようと思ったの？」<br />
<br />
彼女があたしを見た。<br />
死のうとしているはずなのに彼女の瞳には絶望とかそういう類の負の色がなかった。<br />
<br />
「なんとなく思い立ったから」<br />
「・・・まあ、今までの経験上あんたのことだからそういう答えでもありかなとは思うんだけどさ。でも今回はなんとなくだけでは絶対にないと思う。人が死んでみようと思うには何かしら死んでみようと思わせた理由があると思うのよね。その結果「なんとなく」だとしてもそれ以前に何かしらそのなんとなく思うようになった理由があると思うわけよ」<br />
「・・・・・・」<br />
「あたしはその理由を知りたい」<br />
<br />
しばらくの沈黙のあと彼女は「そうねえ・・・」と言った。<br />
<br />
「必要ないかなあと思って」<br />
「必要ないって？」<br />
「教室で授業を受けてて、ふと私が此処からいなくなったらどうなるだろうって考えてみたのよ。突然いなくなったとしたら多少騒ぎになるかもしれないけど、初めから此処に居なければ何にも変わらないんじゃないのかなと思って。私は世界的に有名な人間でもないわけだし、少しは有名かもしれないけれど、此処で私がいなくなったところで何にも変わらないのならいてもいないのも一緒なんじゃないのかなあと思ってね。早々そんな影響を与える人間っていないとはわかっているのだけど、それでも私が存在していたいと思う理由が揺らいじゃったのよね」<br />
「・・・・・・」<br />
「そのときに『そうだ、死んでみよう』って思ったのよ。思いついたことは今までほとんど実行してきたし、今回もその流れでというのもあるわ。未練がないと言えばないこともないのだけど、それは今『死んだらどうなるのだろう』という興味以上に惹かれるものではないわね」<br />
「・・・なるほど。よくわかった」<br />
<br />
あたしがゆっくり頷くと彼女は「わかってもらえればよかったわ」といってにっこりと笑ってロープに首を通した。<br />
<br />
「あっ、あと、もう一つ言いたいことがあるんだけど」<br />
「なあに？」<br />
「此処、あたしの家なんだけど」<br />
<br />
それは彼女にとって予想もしていない言葉だったらしく、彼女は目をぱちぱちさせたあと、「そうね」と言って頷いた。（知ってるけど、それがどうしたの？）という疑問が瞳に浮かんでいた。やっぱりなあ、と思いながらあたしは一つため息をつく。<br />
<br />
「人の家の敷地で自殺した場合親族に罰金が科せられることって知ってる？」<br />
「えっ」<br />
<br />
それは初めて聞いたというような声と表情だった。<br />
<br />
「それは初耳だわ」<br />
「だろうね。いつもあんたはそういうことを一切考えたり調べたりせずに実行するから。ああ、そうだ、首吊りするんだったら目隠ししてもらえる？なんか目玉とか飛び出すらしいしそんなトラウマになりそうなもの見たくないから」<br />
「わかったわ」<br />
「あと、首吊りするんだったらトイレにいっておいた方がいいよ。あと胃の中もなるべくからっぽにしておいてね。身体の穴という穴からいろんな液体が出るらしいし、嘔吐物とか排泄物とかあたしは絶対に掃除したくないから」<br />
「それは嫌ねえ・・・まあ私としてもそんなもの撒き散らす迷惑は最小限に抑えておきたいし行っておこうかしら」<br />
<br />
そういって彼女が縄から首を外し、床へと降りる。<br />
<br />
「あと首吊りって失敗して縄が切れたりすると脳細胞の破壊により重篤な脳障害を起こしたりするケースがあるんだって。脊髄尊攘なんてことになればさらに後遺症を悪化させる原因になる」<br />
「大丈夫よ。前に実験として木に括りつけて紐にぶら下がってきたとき切れなかったから縄については心配ないわ。それについては失敗しなければ何も問題がないわ」<br />
「首吊りは早い間に救出できればほぼ後遺症を残さずに生き残れる可能性がある」<br />
<br />
そこで彼女が少しだけ驚いた顔をしてあたしをみた。<br />
<br />
「ただし、5分を超えてからは様々な後遺症を残す可能性がある――――ほら、あたしもたもたしてることがあるから5分以上かかっちゃうかもしれないじゃない」<br />
「・・・助けてくれるつもりなの？」<br />
「まあ、あたしの部屋で死なれると後々いろいろと面倒だしね。借家だしさ」<br />
「もう！私を心配してくれてるわけじゃないのね」<br />
<br />
そういって彼女は怒ったふりをした後で楽しそうに嬉しそうに笑った。あたしも少しだけ笑う。<br />
<br />
「あーあ、もうなんかどうでもよくなっちゃった」<br />
「そう」<br />
「今度考えるときはもう少ししっかり調べてから試すことにするわ。いつもみたいに私が自分で後始末をできるものではないわけだし。どう転んでも誰かしら他人のお世話にならなくちゃならないみたいだから」<br />
「まあね。とはいえこの世の中、協力者を募れば誰かしら手伝ってくれそうな気はするけど」<br />
「私、他人に世話になることってあんまりすきじゃないのよねえ・・・ほらそれに死んだあとでちゃんとやってくれるかってわからないじゃない。まかせるにしてもある程度信頼の置ける人物にまかせたいところだけど、信頼のおける人物にそんなことを頼むのもまた気がひけるし・・・はあ、何か効率がよい死ぬ方法ってないのかしら」<br />
「大往生すればいいんじゃない。愛すべき家族に見守られ、これといって苦しむこともなく、ハッピーエンド！って感じで死ねるよ。多分。」<br />
「そうねえ・・・ちょっと考えてみるわ」<br />
<br />
そういって彼女がにっこりと微笑んだところでどちらともなくぐううと気の抜けた音が聞こえた。あたしは昼食をなんにしようか考えながら家に帰ってきたことを今更思い出した。<br />
<br />
「あー・・・冷蔵庫の中に何あったっけなー」<br />
「んーと、卵とキャベツと人参と豚肉と玉葱とチーズ、あと冷たいご飯と調味料がいくつかだったかしらね」<br />
「・・・人んちの冷蔵庫を開けたんですか」<br />
<br />
そういって冗談交じりにじろりと彼女を睨むと彼女はぱちぱちと可愛らしく瞬きをしたあとで「ええ」と言ってにっこりと微笑んだ。それがさも『当たり前でしょ』という響きをもっていたのであきれてしまった。願わくば他の人様の家ではやっていませんように。<br />
<br />
「・・・炒飯でも作るかな」<br />
「いいわね。私貴方の作る炒飯すきよ」<br />
「・・・食べてくつもり？」<br />
「もちろん」<br />
<br />
満面の笑みで答えた後「さあ、食事の前に片付けておかなくちゃね」と彼女は大げさに手をたたき天井にかけたロープを外し始める。あたしはやれやれという具合にため息をつき、彼女に背を向けて台所へ向う。<br />
<br />
「ねえ」<br />
「ん？」<br />
「私がいなくなったら悲しい？」<br />
<br />
思わず振り返ると彼女はロープを手にしたままじっとあたしを見つめていた。<br />
子どものように純粋で透き通るような目をして。<br />
<br />
「悲しいよ」<br />
<br />
そう答えた自分がどんな表情をしていたのか、わからない。<br />
<br />
「そう」<br />
<br />
ただそういった後の彼女の表情は、とても美しかったから。<br />
きっと彼女が望む表情をしていたのではないかと思う。<br />
<br />
再び彼女がロープの片づけを再開したので、私も台所へと向った。冷蔵庫を開けると先ほど彼女が言った材料が静かに待っていた。冷えたご飯の量が2人分には少し足りなかったのでわたしは米をとぐことにする。温かいご飯で作る炒飯の方がおいしいと昔どこかで言っていたのを聞いたことがあるし、昼からの講義はもうないのだから多少時間がかかってもいいだろう。<br />
<br />
彼女は文句を言うかもしれないが、その分とびっきりおいしい炒飯を作ろう。<br />
<br />
できれば、彼女が死にたいと思ったことを忘れるくらいおいしいのがいい。<br />
<br />
<br />
<br />
うっしと気合を入れてあたしは玉葱を刻み始めた。<br />
</font>]]>
    </description>
    <category>創作短編</category>
    <link>https://anothercolor.blog.shinobi.jp/%E5%89%B5%E4%BD%9C%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E3%83%8D%E3%82%AC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E3%83%8F%E3%83%83%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%89</link>
    <pubDate>Fri, 10 Sep 2010 15:53:48 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>あなたとワルツ</title>
    <description>
    <![CDATA[<font size="2"><br />
<br />
<br />
「思い立ったら吉日っていうじゃない。だからわたし死んでみようと思うの」<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
それはまるで今から買い物にでも行ってくるというくらい軽い響きを持っていたので思わず私は「いってらっしゃい」と言いそうになってしまった。<br />
彼女の奇行とも呼べる突発的な行動は今まで幾度となくあったし、もう自分も随分慣れてしまっていて、さほど驚かなくなっていたのだが、今回の言葉は流石に耳を疑った。<br />
<br />
「えっ？」<br />
<br />
思わずそう言うと彼女は近所にあるホームセンターのビニール袋から自らが買ってきたであろう丈夫そうなロープを出しながら<br />
<br />
「うん？聞こえてなかった？」<br />
<br />
と言ったあと、手をとめ私をみてにこっと笑い、<br />
<br />
「死んでみようと思うの」<br />
<br />
と再び言った。<br />
<br />
「いやいやいや。そんな簡単に言われましても」<br />
「方法はもう考えてあるのよ」<br />
<br />
ふふんと得意げな表情をして彼女は先ほどのロープを見せる。<br />
ロープを出してきた地点でなんとなくそんな気もしていたが、一応確認も兼ねて私は彼女に聞く。<br />
<br />
「首吊り？」<br />
「正解」<br />
<br />
彼女は満足そうに頷いてにこりと笑った。その笑顔がまた今から死のうとしているだなんて信じられないくらい眩しい笑顔だったので、私は目を細めるついでに眉間にしわを寄せた。<br />
彼女の奇行がいつから始まったものなのか私は知らない。<br />
ただ出会った頃から彼女はすでにこんか感じにぶっとんでいたし、言動も行動もほとんど予想できないことばかりだった。初めてあった頃こそ驚いてもいたが、7年、それも毎日顔をあわせて付き合っていれば嫌でも慣れる。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
私と彼女の出会いは7年前、私が初々しい中学1年生の頃に遡る。<br />
名簿順でたまたま彼女が私の隣の席に座っていたのが最初の出会い。<br />
初めてみた彼女の感想は「美しい人」だったのが懐かしく思える。<br />
彼女はクラスの中でも学年の中でもひときわ目立つ誰も文句のつけようのない美人だった（正確には「美人である」今でも外見の美しさはまったく変わっていない）。そのせいか初対面のときは同姓にも関わらずどきどきして、緊張したのを覚えている。元々人と話すことが得意ではない私がしどろもどろになりながらもなんとか名前を告げると彼女はそっと私の手を握りにこりと微笑んだ。それは天使のように神々しく美しい笑顔だった。これほどまでに美しい笑顔を見たことがあるだろうか。目の伏せ方、口の形どれをとっても美しくて、私はその眩しさに目を細めたくなった。<br />
<br />
彼女の次の言葉を聞くまでは。<br />
<br />
「ところで貴方はプロレスとか興味あるかしら？」<br />
「えっ？」<br />
<br />
美人から突然プロレスという似合わない言葉が出てきたため私は固まった。<br />
<br />
「えっ？プロレス・・・、えっ？」<br />
<br />
手を握られたまま私がなんと返答するべきか困っていると彼女はそのにこやかな笑顔を崩さないまま<br />
<br />
「正確にはバックドロップというワザに興味があるかをお聞きしたいのだけど」<br />
<br />
と言ったので私は更に困惑した。<br />
<br />
一体この美人は何を言っているのだろうか。いや、彼女はとても美しいわけだから護身術の一つとしてプロレスのワザを知っていたとしてもおかしくはないはずだ。普通は空手とかなんだろうけどそこは彼女の両親が「平凡ではいかん」とかうんぬんでプロレス技を覚えるに至ったのだろう。だから彼女は私たちでも聞いたことのあるバックドロップについて聞いてきたのだろう。美人のたしなみの一つとしてバックドロップでも知っておかねばならないと思って。そうだ、きっとそうに違いない。そうだと思いたい。<br />
そう困惑して意味のわからないことを考え始めた私を無視して彼女は言葉を続ける。<br />
<br />
「わたしは前々から興味があって。でも家の者に試すにはどうにもこうにも身長も筋力も足りなくて・・・」<br />
<br />
試す？何を？<br />
<br />
気づいたら彼女は私の背後に回っていた。そしてぎゅう私を背後から抱きしめる。顔が先ほどよりずっと近い位置になり緊張のためか私の鼓動も自然と早くなった―――今思えばこれはこれから自分に起こりうる未来に対しての緊張だったのかもしれない。<br />
<br />
「ですから、少し協力してください」<br />
<br />
そういわれるが早いか、彼女はそれは見事なバックドロップを私にかましたのだった。<br />
<br />
<br />
<br />
その強烈なまでの初めての出会いは、今思い出すだけでも首が痛くなる程度に鮮明だ。<br />
運良く死ぬことはなかったが、わたしは頭を強打して気絶。数時間たってようやく意識が回復した私に彼女は「ごめんなさい！ごめんなさい！」と目いっぱいに涙を浮かべながらしきりに謝ってきた。<br />
<br />
「初めてだったから、加減を知らなくて・・・」<br />
<br />
そういう問題ではなかった気がする。<br />
<br />
しかし美しい人が私のために（まあ彼女のせいであるとはいえるのだが）泣いているという状況はなんだか少し嬉しい気がしたわけで。私は彼女に「気にしないで」とやさしい言葉をかけた。その言葉を聞いて彼女は更に涙をぼろぼろこぼして「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝り続けた。<br />
<br />
「もういいよ。まあ、私もバックドロップに興味はないって声をかけとけばよかったんだし・・・」<br />
「・・あの・・・」<br />
<br />
彼女の瞳が私を映す。涙でにじんだ瞳はとてもきらきらしていて綺麗だなとぼんやりとした頭で私は思った。<br />
<br />
「・・・わたしと、お友達に、なっていただけ、ませんか・・・っ？」<br />
<br />
このタイミングでそれはない。<br />
<br />
今だったら問答無用でそう突っ込むがその頃の私はまだ若かった。だから突然の申し出に対して若干の違和感を感じながらも「いいよ」と答えてしまったのだし、美人のその潤んだ瞳の奥にある狂気ともいえるであろう存在に気づくこともなかった。<br />
<br />
<br />
こうして私と彼女は出会い。友達になった。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
そして現在、目の前で彼女は鼻歌を歌いながら天井からロープをつるしている。<br />
なんというシュールな光景だろう。そう思いながらも私は黙ってそれを眺めていた。彼女には不似合いなごつごつして荒いロープを彼女はこれまた美しい声で唄を歌いながら結ぶ。<br />
<br />
「よーし、できたー」<br />
<br />
完成した物を満足そうに眺めた後、子どものように万歳をして喜ぶ彼女。部屋の中央にぶら下げられたそれはまるで一つの芸術作品のようにも見えた。<br />
<br />
「あのさ」<br />
「ん？なあに？」<br />
<br />
くるりと彼女が振り返る。<br />
<br />
「ここ、私の家なんだけど」<br />
<br />
そう声をかけると彼女はぱちぱちと何回か瞬きをした後、「そうね」と言って頷いた。<br />
それは声にはなっていないが（知っているわ、それがどうしたの？）と問うような響きが含まれている。<br />
わたしは、はー、と短くため息をついた。<br />
<br />
「人の家の敷地で自殺すると親族に罰金が科せられるって知ってる？」<br />
「えっ？」<br />
<br />
それは初めて聞いたというような声と表情だった。<br />
<br />
「あと、首吊りは死体が汚いらしいからやめたほうがいいよ。身体の穴という穴からいろいろな液体をこぼして死ぬんだって」<br />
「・・・・・・それは美しくないわねえ」<br />
「それに後から掃除するのが面倒だし大変だから勘弁して」<br />
<br />
私が本当に迷惑そうな顔をしていうと、彼女はうーんと考え込むようにして、<br />
<br />
「掃除が面倒ということを考えると飛び降りも切腹も美しくないわねえ･･･。焼身は割と綺麗に死ねると聞いたことがあるけれど、最近は焼却炉なんてほとんど存在していないし。かと言って服毒も毒を調べるのが面倒だし、入手には時間がかかりそう。入水するには海はまだ寒いし」<br />
<br />
死ぬというのに寒いも何もないだろうと思ったが、そこは突っ込まずに私はことの成り行きを眺めることにした。<br />
<br />
「うーん、やっぱりやめようかしら」<br />
「それがいいと思うよ」<br />
<br />
そういって私が頷くと「そうね。そうしましょう」と言って手を打って満足そうに微笑んだ。鼻歌を歌いながら先ほどとは逆の順番でロープを解いていく。<br />
私はその光景をやれやれといったようにため息をついた。<br />
ふと彼女がはなうたを歌うのをやめた。彼女の視線の先には先ほどまで天井に括られていたロープが握られている。<br />
<br />
<br />
<br />
「ねえ」<br />
「んー？」<br />
「わたしが死んだら悲しい？」<br />
<br />
私は少しだけ考えた後、<br />
<br />
「悲しいよ」<br />
<br />
と答えた。<br />
<br />
彼女はその答えを聞くと「そう」と言ってとても穏やかに微笑んだ。<br />
それはとても嬉しそうな笑顔だった。<br />
7年という長いような短い年月に凝縮された彼女との時間に、私は彼女の笑顔には種類があることがなんとなくわかった。本物の笑顔とニセモノの笑顔。わたしのこのなんとなくが当たっているのならば、先ほどの笑顔は多分本物の笑顔だと思う。<br />
今も昔も私は彼女の笑顔に弱い。<br />
彼女が毎日のように繰り返す奇行についつい付き合ってしまうのもきっと、彼女の笑顔に魅せられているかだと思う。<br />
だから死なれては困るのだ。私は彼女の外に貼り付けられたニセモノの笑顔なんて欲しくない。内側からにじみ出ている様な本物の笑顔がほしい。<br />
生きて笑う彼女の傍にいたい。<br />
<br />
「ねえ、いいこと思いついた」<br />
「今度は何を思いついたの？」<br />
<br />
彼女が目を細めてふんわりとやさしく微笑む。これは本物の笑顔であるが、あまりよくないことを考えているときの笑顔だ。<br />
<br />
「付き合ってくれるかしら？」<br />
<br />
私の答えがいつもと同じことを知っているくせに。<br />
彼女は毎度私に問う。そのときの彼女の表情が少しだけ緊張していることに気づいたのはつい最近のことだ。不安なのだろうか、私に断わられるかもしれないと。<br />
<br />
普段あれだけ自信満々で意味のわからないことを繰り返しているくせに。<br />
<br />
そう思いながら私は少しだけ笑った後、<br />
<br />
<br />
「貴方が望むならば、付き合いましょう」<br />
<br />
<br />
と芝居がかった口調で言った。</font>]]>
    </description>
    <category>創作短編</category>
    <link>https://anothercolor.blog.shinobi.jp/%E5%89%B5%E4%BD%9C%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%A8%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%83%84</link>
    <pubDate>Fri, 10 Sep 2010 15:49:17 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>やさしい刃</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
孤独に輝く鈍色の刃をもって、俺は（僕と）対峙する。<br />
彼は笑ってもいない泣いてもいない、ただ、俺を（僕を）見ている。<br />
手には同じく刃を携えて 。<br />
<br />
どちらともなくそれは始まる。<br />
<br />
互いの真ん中を狙い刃が交差する。<br />
鈍色の刃がきらきら光って綺麗だと余裕がないはずの頭がつぶやく。<br />
<br />
俺は（僕は）相手をみる。<br />
瞳は俺を（僕を）映している。<br />
<br />
やさしい刃は空を斬って視界の端にきらきら光る 。<br />
<br />
こんな意味ははい。<br />
<br />
俺は（僕は）殺せないと互いに知りながらも刃をふるうしかないのだ。<br />
真ん中目掛けて。<br />
肉を刺す感触を手に覚えさせるために。<br />
その痛みを忘れないために（その痛みで他の痛みを忘れるために）。<br />
<br />
孤独な世界で刃を振るう 。<br />
<br />
<br />
どうか（どうか）<br />
<br />
そのやさしい刃で（鈍色に光るただのナイフで）<br />
<br />
俺を（僕を）殺してはくれまいか<br />
<br />
<br />
自己完結自己満足。<br />
終わらないために満たされないために。<br />
やさしい刃を振るおう。<br />
君がために。自分のために。<br />
<br />
不毛でまがい物の殺し合いをはじめようじゃないか 。]]>
    </description>
    <category>言葉</category>
    <link>https://anothercolor.blog.shinobi.jp/%E8%A8%80%E8%91%89/%E3%82%84%E3%81%95%E3%81%97%E3%81%84%E5%88%83</link>
    <pubDate>Tue, 11 May 2010 14:51:07 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>世界の終わりに</title>
    <description>
    <![CDATA[<p><br />
夏休み半ば。<br />
大量に配られた夏休みの宿題をそろそろこなさないとやばいよなーと思いながらもだれてしまう頃。例年ならば瑞希も同じようにやばいよなーと思うだけで手をつけず後半に痛い目に合うのだが、去年、ぎりぎりになって彼方の家に駆け込んで精神的にも肉体的にも大変疲労したので（それはもう鬼のように彼方は厳しかった）、今年こそは友人の手を借りずに宿題を終わらせようと朝食を食べた後すぐに取り掛かったまではよかった。</p>
<p>「・・・さっぱりわかんない・・・」</p>
<p>「あー！！」と叫びながら教科書に突っ伏す。文系の教科は得意なのだが理数系は、かなり、苦手だ。時計をちらっとみると既に時刻は昼前に差し掛かっていた。今日は珍しく家族は出かけていて家には瑞希一人しか居ない。家族も皆文系（特に古文）は強いのだが理数系はめっぽう苦手であり頼ることは難しい。</p>
<p>「やっぱり彼方に教えてもらうべきか･･･でもなあ･･･しかし･･･」</p>
<p>どうにもこうにも進まず教科書につっぷしてうなった末、</p>
<p>「あっ、そうだ」</p>
<p>いい方法を思いついたとばかりに顔をあげる、そして善は急げとばかりに適当に朝の残りで昼食をすませ、例年のように彼方の家に山のように出された夏休みの宿題を抱えて乗り込んだのがつい先ほどの話。<br />
突然の訪問で会ったが彼方はさほど驚いた様子も見せず、瑞希が持ってきた宿題を見て露骨に嫌そうな顔をした。</p>
<p>「やっ！久しぶり！」<br />
「・・・宿題なら教えないぞ」</p>
<p>口には出さなかったが「面倒くさい」と思っているのが声からも伺えた。<br />
クラスメイトのほどんどは彼方が「面倒くさい」という理由で手伝いを断わったと聞いたら意外だという表情をみせるだろう。学校での彼方は基本的に親切であり、面倒くさいから断るというイメージはほとんど持っていないと思うからだ。断わるとしても何かしらきちんとした理由があり、真面目で気のいい青年というのがクラスメイトの印象だと思うし、瑞希も基本的にはそうだろうと思っているのだが、こちらは付き合いがなまじ長い分少しだけそこからボロというのか、甘えが出ている気がする。<br />
まあそれはそれで理解しているし、こういう反応をみせるということは十分予想の範囲内。<br />
だからその為の対策も考えてきた。</p>
<p>「おみやげをね、もってきたんスけど」</p>
<p>おみやげという言葉に彼方がぴくりと反応をみせたのを瑞希は見逃さなかった。</p>
<p>「チョコレートアイス」<br />
「・・・・・・」<br />
「特価品じゃなくて、高いやつ」<br />
「・・・・・・」<br />
「あとついでに同じメーカーの箱のも買ってきたんスけど」</p>
<p>それから少し間をおいたのち、</p>
<p>「数学とか化学を教えればいいんだな」</p>
<p>という答えが返ってきたので、瑞希は心の中で「よっしゃ」とガッツポーズを決めた。<br />
彼方は甘いものにめっぽう弱いのだ。<br />
それを知っていて買ってきたのだが、ごくごくごくたまに断られることもあるので、今回は少しでも断られる可能性を少なくするために奮発してみたのだが、功を奏したようである。</p>
<p>「よろしく！おじゃましまーす！」</p>
<p>そういって明るい声を上げて彼方の家にあがり、宿題をはじめてから２時間が経過した。</p>
<p>うなることもあったが、宿題は随分とテンポよく進んだ。さすが毎回学年でトップをキープしているだけあるというか、彼方は勉強が教えるのが上手なのだ。だから一人でうなっていたときよりは遥かに効率よく進むことができたが、苦手な分野であるといえばあるのでかなり疲れてきた。ちょうど切りのよいところにさしかかったので休憩しようと持ちかけると珍しく彼方も素直に了承してくれた。<br />
先ほど買ってきたアイスを机を挟んで二人で食べる。<br />
普段ならば終わるまで机にしばられてみっちりとやらされるのだが、今年は夏の終わりじゃなく半ばにきたことがよかったのかもしれない。まあ、うきうきと目の前で先ほど瑞希が買ってきたアイスを食べる姿を見ていると、単純にアイスを食べたくて休憩をいれたのかもしれないが。</p>
<p>（まあ、どちらでもいいか）</p>
<p>そう思いながら瑞希は自分の分として買ってきたソーダアイスをかじる。<br />
冷たくておいしい。<br />
普通のバニラアイスといったものもすきだがどちらかといえば夏はソーダアイスのようなさっぱりしたものが食べたくなる。溶けない内にしゃりしゃりとかじり終えると同時に彼方も食べ終えたらしく至極幸せそうにカップのふたを閉じる姿が見えた。</p>
<p>「本当にすきっスねー。甘いもの」<br />
「甘いものは最高だと重う。俺三食ケーキバイキングでも生きていける」</p>
<p>冗談ではなく本気で彼方は言っている。三食ケーキというのを想像してみたが想像だけでも胸やけがしてきたので「やめときなよ」と適当にとめておくことにした。<br />
適度に釘を刺しておかないと、この友人は本気でやりかねない。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>縁側の方へと視線を移す。<br />
外では勉強を始めたときからずっと際限なく蝉が鳴いている。<br />
まだ少しだけソーダの味が残る棒をがじがしとかじりながら、視線を庭から空へと移す。<br />
先ほど食べたアイスよりも真っ青な青空に白い雲が浮かんでいる。<br />
明るく綺麗な夏のよく見慣れた空だ。</p>
<p>ふと視線を室内にいる彼方の方へ向けると彼方も同じように空を見ていた。<br />
無表情とも見える表情だったが、それにしてはどこか陰のある表情だった。</p>
<p>彼方の過去に何があったのか、自分はほとんど知らない。</p>
<p>他の友人や周りの人たちと比べるならば、知っている方になると思うが、それでも半分も知っている気がしない。互いの過去については昔から時間をかけてたくさん話をしてきたけれど、それでも彼方の過去というのは大事なところが全部はぐらかされている気がして全然掴めた気がしない。</p>
<p>（まあ、僕らの話が信憑性がなさすぎるっていうせいもあるんスけどね）</p>
<p>自分の話を普通に誰かに話していたとしても信じてもらえないだろう。<br />
似たような体験をしてきたからこそ、まだ、信じられるという話なのだ。</p>
<p>視線を再び空へと戻す。<br />
いつの間にか蝉の鳴声が聞こえなくなっていた。<br />
青い空に白い雲だけが流れていく。</p>
<p><br />
「もしさ、世界が僕と彼方の二人っきりになったらどうするっスか？」</p>
<p><br />
そんな疑問がふと浮かんだと思ったら次の瞬間には口を開いていた。<br />
彼方が「は」と短くいってこちらをみたのと、自分が無意識につぶやいていたことに驚いて彼方の方をみたのはほぼ同時だった。</p>
<p>「えー、と、いや、なんとなくね、ふっと浮かんできた疑問なんスけどね」</p>
<p>何故こんな疑問を声に出してしまったのだろう。自分でもわからなくて頭が混乱している。<br />
彼方は少しだけ天井の方をみてうーんと短くうなったあと、視線を真っ直ぐ瑞希に移して、</p>
<p>「自殺するかな」</p>
<p>とまじめな顔をして答えた。</p>
<p>その衝撃的ともいえる答えを聞いて、これまた自然に瑞希の口からでた答えは「やっぱり」というものだった。</p>
<p>「やっぱりってなんだよ」<br />
そういって彼方が少し笑う。<br />
「いやー、なんでかわからないけどそんな気がしてたんスよねー。･･･というか多分僕もそうするだろうなあと思って」<br />
「まあ、今の状態で突然、世界に二人だけになったとしてもしばらくの間は生きていけると思うよ。人だけが消えたんだとすればまだスーパーとかに食料品はあるだろうし。暑いけど砂漠みたいに暑いわけでもないから日中はこうやって家の中に居て、夜に食料をとりに行くとかでもいいんじゃないかな。幸い夜目は二人とも利くほうだし」<br />
「なんか現実味を帯びてきたっスねー」というと「あくまで仮想の範囲だけど」と彼方は短く答えた。</p>
<p>「多分少しの間なら生きてはいける」<br />
「うん」<br />
「だけど、そうまでして生きてる『意味』はない」<br />
「うん」</p>
<p>世界が二人になった場合、生きてる意味が僕らにはない。</p>
<p>「僕はこの世の中に『家族』が一人もいない地点で生きてる意味はないっスからね」<br />
「そこはまあ、同意するな」<br />
「いろいろとめんどくさいと思いながらも結局『血』とか『家族』っていうのが僕にとってはすごく大事なんスよ。それがなくなったら僕は僕でいられなくなる。『私のアイデンティティがなくなってしまう。』――――結局なんだかんだ言いながら僕は『血』と『家族』、『一族』ってものに守られてると思うんスよね」<br />
「俺の場合は刹那となっちゃんだけだけどね」<br />
「ひでえ！僕は含まれないんスか？」</p>
<p>冗談めかして言うと彼方は何も言わずにっこりと笑った。<br />
多分先ほどいったそれは本当のことなんだろうと思う。今までに何度かそういってるのを聞いたことがあるし、二人を守るためにいろいろと努力をしていることもよく知っている。<br />
そしてそこに自分が含まれていないことは、初めから知ってる。</p>
<p>「あーでももし世界に二人だけになって、死ぬと決まってるんなら最後は盛大に高いものとか食べたいな。誰も居ないんなら盗難だのなんだの取り締まる人もいないってことだし。あの駅前にあるケーキ屋のケーキとか残ってるだけホールで食べたい」<br />
「なんかせこいな！！てかやっぱり甘いものなんスか！」<br />
「いやー、そこはやっぱり譲らないだろう」<br />
「ええー･･･」<br />
「じゃあ瑞希は一体何が食べたいんだよ？」<br />
「えっ、寿司とか食べたいっスね。いなり寿司。油揚げだけでも可」<br />
「･･･本当に油揚げすきだよな･･･それは血なの？それともお前がすきなだけなの？」<br />
「さあ。でも家族はみんないなり寿司すきっスよ」<br />
そう答えると彼方は「やっぱり血かー」とつぶやきながら何度か納得したように頷いた。<br />
「職人さん居ないから彼方作ってね」<br />
「えー･･･めんどくさい」<br />
「いや死ぬ前の最後の食事なんだからそんなこと言わずに作ってくれてもいいじゃないっスか！僕より彼方の方が料理上手なんだから」<br />
「うっ、それを言われると弱いよなあ･･･まあもしそんなことがあったら腕によりをかけて作ってやるよ」<br />
やれやれと言うように彼方が短くため息をつくのをみて、瑞希は嬉しそうに両手を上げてバンザイをした。<br />
「やったー！約束っスよ！というかもう今からその約束果たしてくれてもいいっスよ。僕、夕飯にいなり寿司食べたい」<br />
「いやいやいや、お前この会話の流れで行くとお前今日自殺する流れになるぞ！！早まるな！！」<br />
「そうか！しまった！！ううー･･･そっかー･･･折角食べれると思ったのにー」</p>
<p>あからさまにしょんぼりと机に額をひっつける瑞希。<br />
しばしの間沈黙があった後、彼方が「今日、夕飯手伝うなら作ってやるよ」とつぶやいたのを瑞希は聞き逃さなかった。</p>
<p>「本当っスか！」<br />
ぱああと顔を輝かせる。夕飯に困っていたのは事実で、家族がみんな今日は夕飯時には帰ってこれないという話だったので、一人で食べるのは味気がなくて嫌だなあと思っていたのだ。<br />
「ただし材料費は半額持てよ」<br />
「了解っス！」<br />
「あと宿題が全部終わるまでは買い物に行かないから」<br />
「うっ･･･」<br />
「スーパーが閉まるまでに間に合うといいな」<br />
そう言いながら彼方はにこりと黒い笑みを浮かべた。<br />
「まあ、間に合うようにするけど。･･･此処からはさらに手厳しくいくぞ」<br />
彼方の表情から後の未来を想像して瑞希は少しだけ夕飯について後悔した。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>それからなんとか宿題を終え、買い物に出た頃にはすっかり世界はオレンジ色に染まっていた。<br />
「疲れた･･･」<br />
「お疲れ。でも終わったからよかったじゃん」<br />
「まあ･･･そうっスね」</p>
<p>うんしょっと瑞希は大きく伸びをする。<br />
日が長いからまだ空は明るいが先ほど時計で確認した時刻は買い物に出るにはぎりぎりくらいの時間だった。</p>
<p>「結構遅くなっちゃったっスねー」<br />
「まあ、油揚げくらいならまだ売ってるだろ、多分」<br />
「ありますように･･･ありますように･･･」<br />
両手を合わせて夕日に拝む瑞希の姿をみて「大丈夫だ」と彼方は笑った。</p>
<p>「そういやさっきの世界に二人だけになるならって話だけどさ」<br />
「うん？」<br />
「もし世界で二人だけになるなら俺は瑞希とがいいと思った」<br />
「えっ！お気持ちは嬉しいけどごめんなさい」<br />
「違う」<br />
即答だった。しかも真顔で。<br />
そんな即効で否定しなくてもいいじゃないかと心の中で少しだけ思う。</p>
<p>「じゃあなんで僕とがいいんスか？」<br />
「だってお前とだったら俺は迷うことなく死ぬことができるから」</p>
<p>彼方はまっすぐと瑞希を見て、言う。</p>
<p>「他の誰かと居たら迷いが生じるかもしれないからさ。瑞希とだったら殺しあうこともなく、生きようと思う事もなく、迷わず死ねると思う。まあ守れなかったこととかそういう後悔はあるかもしれないけど、少なくとも死ぬことに対する後悔はもたなくて済む気がする」</p>
<p>そこで一呼吸を置いて、</p>
<p>「だから世界で二人だけになるなら瑞希とがいい」</p>
<p>ともう一度言った。</p>
<p>「･･･それは、また、光栄な話っスね」<br />
「光栄といってもらえると変な感じがする話だけどな」<br />
「まあ、でも何かしらの形で選んでくれたってことは光栄なことっスよ」</p>
<p>選ばれたということ。最後に僕を選んでくれるということ。<br />
大切な誰かじゃなくて、僕がいいと言ってくれたこと。<br />
それが死ぬためだとしても――――我ながら少しばかりずれていると思うけど。</p>
<p>「まあ、一応お礼を言っとくっス、ありがとう」<br />
彼方はお礼を言われたことに少し戸惑ったようだが、少しだけ笑って、<br />
「どういたしまして」<br />
と返した。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>それから先の会話は他愛もない世間話だったと思う。<br />
買い物に行って無事油揚げを手に入れ、夕飯を彼方の家でご馳走になって、今日は泊まって行く気はなかったのであまり遅くならない間に家路についた。家に着くと家には灯りが灯っていて、玄関を開け声をかけるといつものように家族が迎えてくれた。<br />
家族との会話はほどほどに、風呂に入り、疲れた頭と身体をを休めるべく早めに床についた。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p><br />
<br />
<br />
その夜、世界に彼方と二人だけになる夢をみた。<br />
僕らは迷わず共に、しかし二人別々の場所で死ぬことを選んだ。<br />
そこに後悔も迷いもなかったと思う。</p>
<p>気がついたら僕はどこかの屋上に一人で立っていた。<br />
空は雲ひとつない美しい青い空。<br />
足元へと視線を移すと下は無機質なコンクリートの地面があった。</p>
<p>彼方に言われた言葉を思い出してみる。<br />
喜ぶべきことではないんだろうなと頭では理解しているし、もしかしたら怒るべきところだったのだろうかとも薄ぼんやりと思う。</p>
<p>だけど僕は嬉しかったのだ。<br />
だからお礼を言ってしまった。<br />
あれは心からの感謝の気持ちだった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>もしも、があったとしても世界に誰も居ないのならばこれから先の未来はもう見えている。<br />
友人はまだこっちにいるのだろうか、それとももう逝ってしまったのだろうか。<br />
どちらでもいい。逝きつく所はどうせ同じだ。</p>
<p>僕は空へと足を踏み出した。</p>
<p>何故か不思議と怖くなかった。<br />
<br />
&nbsp;</p>]]>
    </description>
    <category>HARUSION*短編</category>
    <link>https://anothercolor.blog.shinobi.jp/harusion-%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E7%B5%82%E3%82%8F%E3%82%8A%E3%81%AB</link>
    <pubDate>Mon, 26 Apr 2010 19:24:08 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>夏の攻防戦</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
夏休み。<br />
今日は予定も特にはなく、彼、時空寺刹那は部屋でぼんやりとしていた。<br />
<br />
暑いのはどうも苦手だ、と刹那は思う。<br />
畳に仰向けに転がり、左手に持ったぱたぱたと団扇で仰ぐ。<br />
さして涼しくなるわけでもないが、ないよりはましだ。<br />
<br />
「暑かったら、エアコンでもつけたらいいんじゃない」<br />
<br />
そう千空は言ったが、できれば扇風機を含めそういったものには世話になりたくはなかった。<br />
エアコンや扇風機が苦手なわけではない。<br />
ただ単に電気代がもったいないという理由で使うのをしぶっているのである。<br />
<br />
あんまり負担、かけたくないしなぁ。<br />
<br />
兄が一冊のノートの前で頭を抱えてうなっているのを見た。<br />
見てはいけないものをみてしまった。<br />
そんな気がして、何も見なかったことにしたが、見てしまった以上負担をかけることになんとなく後ろ髪を引かれるものがあり、今に至る。<br />
<br />
それにしても暑い。<br />
この間、暑さが苦手だということを生まれて初めて知った。<br />
どちらかといえば寒い方が有り難い。<br />
兄も「寒いほうが（平気だし、着込めばいいから経済的には）まだマシだ」と言っていたし。<br />
<br />
「・・・・・・・・・」<br />
<br />
暑い。<br />
<br />
暑い暑いと考えているから暑いのかもしれない。<br />
奇跡もそう言ってたし。<br />
顔でも洗って気分を入れ替えよう。<br />
むくりと起き上がり、戸を開け廊下に出たところで何かを踏んだ。<br />
<br />
やわらかい、固い床ではない感触。<br />
<br />
とても嫌な予感がした。<br />
<br />
ゆっくり、下を確認すると、やはりというか、案の定というか。<br />
自分が踏んだもの、それは人であり、兄だった。<br />
<br />
「兄貴ー！！」<br />
<br />
足をすぐさまのけ相手を揺さぶる。<br />
<br />
「・・・・・・あ、刹那」<br />
どうやら眠っていたようだ。<br />
まだ意識がはっきりしないのか、その表情はぼんやりとしている。<br />
<br />
「こんな所で何やってるんだよ？！」<br />
「んー・・・涼しいんだよ、此処」<br />
「昼寝に最適なんだー」とのんきに言うと、再び寝る体制に入る。<br />
「寝るな！せめて部屋で寝てくれ！！」<br />
弟の願いは却下されたらしく、瞬く間に兄は再び眠りの世界に行ってしまった。<br />
こうなってしまうともう駄目だ。<br />
<br />
はぁあああと深いため息をつく。<br />
<br />
兄のこの廊下で寝る癖について知ったのは、つい最近のことである。<br />
廊下が広ければまだいい。<br />
しかし時空寺家の廊下はあまり広くはなく、人が寝ていたら絶対に踏んでしまうような幅なのだ。<br />
夜中に水でも飲みに行こうと思い、先ほどと同じ事態に陥った。<br />
ただ前回は初めてのことであり、加えて夜中だったこともあり、絶叫した。<br />
兄もさすがに驚いて目を覚まし、以後寝ないと約束したわけだが・・・。<br />
<br />
現在、兄はすやすやと廊下で寝ている。<br />
<br />
実は昨夜も廊下で寝ていて、兄をたたき起こし、説教をした。<br />
そこで判明したのだが、どうやらちゃんと本人は布団で寝ているのだが、暑かったりすると、いつの間にか寝心地のいい場所を無意識に求めて廊下に来てしまうらしい。<br />
<br />
無意識って・・・危なくないか。<br />
<br />
暑いのがすべての原因のようだし、それを防ぐ為にも兄だけでもエアコンか扇風機の使用を進めてみたが、兄は断った。<br />
<br />
『だったら、廊下で寝てた方が経済的だし』<br />
<br />
だから、それをやめてくれと頼んでいるのだ。<br />
<br />
その後、弟から兄に対する説教が発動し、2時間後、ついに兄は折れた。<br />
とりあえず扇風機をつけるということになったのだが・・・。<br />
兄の部屋を覗くと、扇風機はコンセントが抜かれていた。<br />
<br />
兄貴・・・。<br />
<br />
思うことはいろいろあったし、言いたいこと（主に説教）はあったが、とりあえず、此処に寝かしておくわけにもいかない。<br />
・・・自分がまた踏んでしまうかもしれないし。<br />
<br />
「よいしょ、っと」<br />
<br />
兄の足を掴みずるずると部屋に引っ張っていく。<br />
そのまま部屋の中で一番涼しそうな場所へと運び足を下ろす。<br />
ひきずられたにも関わらず、兄は熟睡しているようでまったく動かなかった。<br />
扇風機のコンセントをさし、つける。<br />
そよそよと涼しい風が彼の髪を揺らした。<br />
<br />
「これでよし」<br />
<br />
満足気に頷くと、顔を洗うという目的を果たすべく洗面所へと向かった。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
そして部屋に戻る途中。<br />
廊下を見ると先ほど部屋に引きずっていったはずの兄が再び廊下で熟睡していた。<br />
ばっちり部屋の扇風機のコンセントを抜いて。<br />
<br />
さすがに本日、二度目はなかった。<br />
<br />
<br />
<br />
その後弟により文字通り叩き起こされた兄は正座で説教を受けることになり、この説教で少なくとも弟がいるときには廊下で寝る癖は解消されることになった。<br />]]>
    </description>
    <category>HARUSION*短編</category>
    <link>https://anothercolor.blog.shinobi.jp/harusion-%E7%9F%AD%E7%B7%A8/%E5%A4%8F%E3%81%AE%E6%94%BB%E9%98%B2%E6%88%A6</link>
    <pubDate>Tue, 19 Aug 2008 05:17:40 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">anothercolor.blog.shinobi.jp://entry/12</guid>
  </item>
    <item>
    <title>すべて</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
響け声、何処までも <br />
響け歌、何処までも <br />
果て無き空へのラブソング <br />
<br />
<br />
<br />
運命が分かれたあの日 <br />
かわいそうな神様を <br />
助けてくれと頼まれた <br />
<br />
その旅路はけしてよいものではないし <br />
茨の道だと分かってた <br />
だけど神様を救えるのは僕だけならば <br />
僕はその為にすべてを捧げよう <br />
<br />
白い世界の真ん中で <br />
僕の命が尽きるまで <br />
<br />
<br />
<br />
物語はまだまだ続く <br />
姿を変えて受け継がれし魂は <br />
穢れることなく輝きをました <br />
<br />
痛みを感じなくなったのはいつだろう <br />
足元から崩れていく感情 <br />
悲しみをしらない少女 <br />
笑顔を忘れた少年 <br />
<br />
2人の距離はつかず離れず <br />
運命の旅路を駆け抜けた <br />
<br />
<br />
<br />
たくさんのものを失って <br />
たくさんのものを手に入れる <br />
傷つき傷つけ僕らは大人になる <br />
<br />
あの日小さな約束をした <br />
必ず迎えに来ると <br />
抱きしめられた身体から伝わる温度 <br />
その眼を心を閉ざし深い眠りへとついた <br />
<br />
空色の薬を一粒飲んで <br />
兄弟は同じ夢をみる <br />
<br />
<br />
<br />
初めてできた友達で <br />
失いたくなくて手を伸ばすけど <br />
その手は緩やかに拒まれた <br />
<br />
踏み込んではいけない <br />
そう知っていたのに踏み込んだ <br />
確かに俺じゃ背負えないかもしれないけど <br />
何もしないのだけは嫌だから <br />
<br />
大丈夫を繰り返して <br />
一つずつ壁を乗り越えていこう <br />
<br />
<br />
<br />
触れたいのに触れられない <br />
伸ばしたその手を引っ込めた <br />
あきらめようと思ったのに <br />
<br />
あなたはいった <br />
抱きしめるのに理由はいらないと <br />
いくつの言葉に救われたのだろう <br />
溢れ出てくるのは涙だけじゃない <br />
<br />
嘘をつくのはもうやめた <br />
彼女の傍で生きて生きたいから <br />
<br />
<br />
<br />
失いたくなかった大切なもの <br />
指からすり抜けていったあの日 <br />
私は神様を恨んだ <br />
<br />
どうしてを繰り返す <br />
答えなんて返ってこないのに <br />
答えをくれない神様の代わりに <br />
彼が私に答えをくれた <br />
<br />
涙はもう流さない <br />
この空の海で天使がおぼれないように <br />
<br />
<br />
<br />
あなたが死んでどれくらいの時が経ったのでしょうか <br />
時間はまったく動いている気がしません <br />
まるで出会いすら夢だったと思えます <br />
<br />
私とあなたの出会いは <br />
間違っていたのだと思います <br />
出会いがなければ別れはなかったから <br />
だけど私はあなたに出会えて幸せでした <br />
<br />
墓標に捧げるは青い薔薇 <br />
あなたと同じ色の薔薇 <br />]]>
    </description>
    <category>言葉</category>
    <link>https://anothercolor.blog.shinobi.jp/%E8%A8%80%E8%91%89/%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%A6</link>
    <pubDate>Thu, 17 Jul 2008 12:38:04 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">anothercolor.blog.shinobi.jp://entry/11</guid>
  </item>

    </channel>
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